行動ロイヤルティ vs 心理ロイヤルティ

顧客ロイヤルティは、「行動」ロイヤルティと「心理」ロイヤルティの2つの側面があります。前者は継続的な商品購入や他人に商品を勧めるなどの顧客の行動面に焦点をあてているのに対し、後者は愛着や信頼などの感情面に焦点をあてているのが特徴です。 心理ロイヤルティに関しては、数々のメソッドやツールが流通し、ブランドへの愛着度や親近感を評価するスコアが比較的簡単に得られることから、たくさんの企業が心理ロイヤルティを測定するフレームワークを活用しています。なかでもNPS(ネットプロモータースコア)は、顧客が特定のブランドに対してどのように感じているかを知るための指標として、広く利用されています。 ただし、顧客の感情と行動は必ずしも一致しません。行動ロイヤルティを生み出す要素はいくつもあり、心理ロイヤルティはそのうちの一つなのです。実際にビジネスを成長させるのは顧客の行動であることから、企業やブランドが必要としているのは「行動ロイヤルティ」の形成だということが出来ます。
心理ロイヤルティの向上だけに気を取られていると、ビジネスの衰退を招きかねません。その理由として、以下が挙げられます。
- 行動ロイヤルティの形成要因は、心理ロイヤルティ以外にも存在します。顧客行動には、感情だけでなく、価格や競合との立ち位置、利便性など、多様な要因が影響しています。
- 心理ロイヤルティ指標は、顧客が「なぜ」そう感じるのか(あるいは感じないのか)については教えてくれません。得られる情報には限りがあり、実践につなげるための十分なインサイトは得られないのです。
- 一般的に、心理ロイヤルティと企業やブランドの業績は相関関係にありません。 心理ロイヤルティが高まれば行動ロイヤリティが高まる、とは限らないのです。
ビジネス分析を行う際、まず「何が」を問うことから始め、次に「なぜ」を問います。まず 何が起こり(あるいは起こると予測され)、そして何故それが起こったのか(あるいは起こるのか)、という流れです。しかし、心理ロイヤルティの調査では「なぜ」に対するあくまで部分的な答えしか導き出せません。最初に来るべき「何が」に対する明確な答えを見つけるには、行動ロイヤルティを測定する必要があるのです。
行動ロイヤルティは、単なる再購買率やリピート率では測ることができません。
ある顧客が同じ商品を再び購入したとしても、その理由が特典獲得やセールなどのインセンティブが欲しいからというものだった場合、見返りがない限り再購入することはないと言えます。キャンペーンがきっかけで商品を再購入した場合も、キャンペーン期間が終了すれば、継続して同じ商品を購入することはありません。なぜならこれらのケースでは再購入の動機が利己的であり、自発的ではないからです。同じ商品を再購入するという行動と、ロイヤルティ行動は必ずしもイコールではないのです。
行動ロイヤルティの測定は、ブランドや製品に対する自発的な好みを定量化することを意味します。行動ロイヤルティを測ることで前述の「何が」に当たる部分を明らかにし、そして初めて、顧客の感情的あるいは論理的な「なぜ」をしっかりと理解することが出来ます。
多くの企業で行動面でのロイヤルティが見落とされやすい背景には、心理面のスコア測定と違って、ブランドごとにカスタマイズした測定方法が求められるという側面があります。
そこで行動ロイヤルティを向上させるための2つの基本原則をご紹介します。
- 顧客維持: どれくらいの確率で、どれくらいの期間、商品を継続購入するか
- 顧客投資: 継続的に購入してもらうために、どれだけのインセンティブを必要としているか
私たちは生存分析などの様々な手法を組み合わせ、クライアントの顧客維持率を予測し、顧客一人当たりの投資額と対比させることを可能にしています。
行動ロイヤルティを理解することは顧客行動の「なぜ」をより深く、丁寧に掘り下げることを意味します。これにより、的確な投資対象の設定ができるようになり、最低限のコストで顧客のロイヤルティを高め、継続的な再購入を促すことができます。