人々はどんな時にデータを必要とするだろうか。通常、インスピレーションではなく「情報」を得ようとするときにデータを頼ることが多いように思う。我々にとってデータとは、客観的であり理性的で、感情の混じらない視点から活用されることが前提となっている。統計的有意性、標準偏差、p値といった指標を把握し、集計、照合そして相関を行う。その作業は非常に地道で緻密であり、専門家であるデータサイエンティストでさえも、時には頭を悩ませることがある。
例えて言えば、木を一本ずつ数え、細かに記録しているうちに、それが森であること自体を見落とすようなことがあり得るのだ。
正直なところ、パソコン画面上に映ること細かな数式やアウトプット、テーブル構造を見つめながら、危うくその波に飲み込まれそうになるのをこらえることが時たまある。様々な企業が顧客データや行動データを生み出す一方で、焦点とすべきは、その目的とデータのもたらす事業価値であることを常に忘れてはならないと思っている。
そこで、データドリブン化の価値の追求において励みとなっている名言を5つほどご紹介したい。
1.『わたしの興味は、データではなく、世界にある。』ハンス・ロスリング
これは私にとって非常に重要な言葉だ。私はデータが好きだ。しかし、人そして成果のほうにもっと心を動かされる。データを設計し分析することを通じて、つまるところ私たちは、取り巻く世界そのものを理解しようとしている。その世界こそ、消費者が住む場所だからだ。データを組み立て、解析、そして展開する行為は、その世界に即して忠実でなければならない。実は、データそのものは焦点ではないのである。
2.『データポイントの背景には必ず、生身の人間が存在する。』シャフカット・イスラム
relativ*のアプローチは、どのように、いつ、なぜ人々がブランドとの結びつきを形成するのかを理解することが核となっている。データ理解において、アナリストという建前を捨て、代わりに人間として向き合うことで、ずっと明確な答えを浮き彫りにできると感じている。
3.『早ければ早いほうが良い。これはデータ収集において常に最善策である。』メリッサ・メイヤー
ターゲット層の理解を深めたい、というクライアントの強い要望がある一方で、最適な消費者情報を集積するための投資には二の足を踏んでしまう、というジレンマに頻繁に遭遇する。データマネージメントは確かに手間がかかる。しかし、あらゆるビジネスインサイトにとって非常に有効な手段であることは、間違いないと考えている。
4.『数えられるもの全てが重要なわけではない。大事なもの全てが数えられるわけではない。』アルベルト・アインシュタイン
これは気の引き締まる言葉であり、クライアントを導くにあたってチームとして念頭に置いていることでもある。データには必要なものとそうでないものがある。だからこそ私たちには、何を収集し議論すべきかの取捨選択をしっかりと行い、鍛錬する必要がある。逆にいえば、溢れるほどのデータを抱えていても、肝心の情報に乏しいということが確かに存在し得るのだ。その意味でこの言葉は的を射ている。どのデータを活用すべきかを理解することは、私たちにとって最も大切な使命の一つである。
5.『データは、ストーリーを語る上で最も有力な手法であろう。膨大なデータの中からどのようにストーリーを編み出すかを試みている。』スティーブン・レビット
データは世界を示し、人について教えてくれるものだ。だからこそ私たちは、最適なデータを集め、集計しようとする。そうしてクライアントの顧客および彼らの世界について理解を深め、説得力のあるストーリーを語ることができるからだ。多くの人にとって心に残るのは、ゲインチャートではなく、ストーリーであるということを,経験を通じて知っている。数式、統計、システム、ダッシュボードは、ビジネスそして消費者ストーリーに落とし込んでみて初めて、その力を発揮するのである。